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8-23 琢磨の葛藤 1

last update Terakhir Diperbarui: 2025-06-02 15:22:07

——ピンポーン

翔が洗濯物を干している頃、インターホンが鳴った。

「お? 来たか?」

翔はモニターを覗きこむと、そこには琢磨が映っている。

「今入口を開けるから待ってろ」

モニター越しに呼びかけると、琢磨は黙って頷く。

「……?」

その様子に翔は訝しんだものの、部屋番号を操作してエントランスを開けた。

そしてものの3分も経たないうちに、再びインターホンが鳴り響く。

翔は玄関に向かい、ドアを開けた。

「よお……翔」

琢磨は左手を少し上げた。右手には大きなキャリーバックを手にしている。

「……どうしたんだ? お前……ホテルは……」

「悪い、部屋へ入れてくれ」

「あ? ああ……いいぞ?」

翔が避けると、琢磨は翔の前を横切り上がり込んできた。琢磨が通り過ぎた際、身体から女性用の香水の香りに翔は気付いた。

「翔……来て早々に悪いが、シャワー浴びさせてくれ」

いつになく、切羽詰まった様子の琢磨。

「あ、ああ。別に構わないが……それよりその匂いはどうしたんだ?」

「匂い?」

琢磨は自分の袖をクンクンと嗅ぎ、途端に不機嫌そうに顔を歪め、忌々しそうに言った。

「くそ! 服にまで……!」

「お、おい……琢磨。おまえ……」

「話なら後で聞く! それよりも早くシャワー浴びさせてくれ!」

琢磨はやけくその様に喚いた——

****

シャワーを浴びに行った琢磨は未だにバスルームから出てこない。

洗濯物を干し終え、蓮の離乳職の準備をしながら翔は時計をチラリと見て呟いた。

「もう30分以上経過しているのに、随分遅いな……琢磨の奴。まるで女みたいに長いな……。うん? 女……? もしかして……」

その時。

「ふう〜やっとすっきりした……」

Tシャツにデニム姿というラフな格好でタオルで髪を拭いながら、琢磨がバスルームから現れた。

「何だよ。お前、随分長かったな?」

丁度離乳食づくりを終えた翔が声をかけた。

「まぁ……ちょっとな。所でいい匂いがするが、何を作っていたんだ?」

「ああ、これは……」

翔が言いかけた時、琢磨は鍋の中を見て驚いた。

「うわ!? な、何だ? この緑色の粒粒に白い物体は……」

「ああ、これは蓮の離乳食でほうれん草とおかゆのしらす煮だ。食べるか?」

「誰が離乳食なんか食べるか!」

琢磨が言うと、翔はニヤリと笑った。

「ほんの冗談だ。真に受けるな」

「お、お前……冗談って……。はあ……も
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